情熱シアター

鎌田千瑛美さん

震災や原発事故をきっかけに、
暮らしや生き方を
見つめ直したい。

peach heart代表 鎌田 千瑛美

peach heart代表
鎌田 千瑛美 かまだ・ちえみ

福島県相馬市生まれ。2011年3月、勤務していた東京のIT企業を退職し、フリーランスとして復興支援に従事。2011年11月に福島女子によるコミュニティ団体「peach heart」を立ち上げ、共同代表となる。2012年1月に福島県に帰郷し、現在はフリーランスとして活躍中。


SeRVの活動を通じて、様々な方との出会いがあります。
出会いから、さらなる絆が生まれ、また新たなつながりができていきます。
このページでは、「困っている誰かの為に、何かしたい」という志をともにする方々の、
活動に対する熱い思いをご紹介します。
今回は、peach heart代表の鎌田千瑛美さんにお話をうかがいました。

第1章

若い女性が本音で語り合える場を

peach heartのWEBサイト
peach heartのWEBサイト

震災が起きて、原発事故があって、福島の環境は大きく変わってしまいました。その復興の中で、子どもたちや妊婦さんに向けた支援はとてもたくさんいただいたのですが、これから子どもを産み育てる可能性がある若い女性たちへの支援は、当時も今もほとんどなかったのです。 放射能の影響はどうなんだろう?避難は?食べ物は?このまま福島に居て子どもを産み育てることができるのだろうか......?さまざまな不安を抱えつつもなかなか本音で話す機会がない若い女性たちが、正しい知識を身につけ、放射能や今後の福島について「私はこう思う」ときちんと話せる場を作りたいと考えて立ち上げたのがpeach heartです。

最初は4、5人の仲間からスタートして、気軽に本音を話しやすい女子会を定期的に開いていました。そのうちに人数も増えて、ただ話をするだけでなく、ピラティスやモテメイク、パーソナルカラーコーディネートなど前向きになれる楽しいイベントを開催し、その後で自分たちの想いや印象に残っていることを紙に書いてそれについて語り合うfuku×fukuガールズcaféという活動を行っていきました。

■ fuku×fukuガールズcafé の様子

第1回「ピラティス講座+ガールズトークセッション」 写真1
第1回「ピラティス講座+ガールズトークセッション」 写真2

第1回「ピラティス講座+ガールズトークセッション」

第2回「オリジナルマスク手作り講座+プチガールズトーク」 写真1
第2回「オリジナルマスク手作り講座+プチガールズトーク」 写真2

第2回「オリジナルマスク手作り講座+プチガールズトーク」

放射能に関する問題は、専門家でも意見が分かれていますし、原発事故から3年以上たった今でも正解は見えてきません。私自身も、震災後に東京の仕事を辞めて福島に帰ろうかと悩んだ時に、将来、子どもや孫がもし差別を受けたり健康被害があったりしたときに「どうしてあの時福島に戻ったの?」と言われたらという葛藤もありました。福島では、親しい間柄でも放射能の話題はタブーという雰囲気が事故直後からずっとありました。特に、若い女性は毎日忙しく過ごす中で、なかなか環境の変化に向き合えないんですね。だから、向き合える人からつながって、思っていることを話してもいい場があるんだよと発信していきたかったんです。
ある女の子は、「甲状腺の検査を受けられるのは事故当時18歳だった子まで。私は数か月前に19歳になったばかりだから検査を受けられないけれど、大丈夫なのでしょうか」と不安を打ち明けてくれました。また、友だち同士でpeach heartに参加してくれた女の子たちは、近くにいた友だちがこういう考えを持っていたのかと初めて知って驚いていたこともありました。
peach heartでは、一人ひとりそれぞれの意見や判断が違っても、それぞれの想いを否定することなく、理解し合うことを大切にしています。学生や社会人などの枠を超えていろんな立場の若い女性が福島について、またこれからの生き方について話せる場であり続けたいですね。

第2章

福島の魅力を再発見し、世界に誇れるふるさとに

震災の直後は、みんなで集まって悩みを話して......という活動が主だったのですが、徐々に輪が広がって行き、震災後の状況が落ち着いてくると、不安や悩みばかりを言い続けることは私自身しんどいと感じることもありました。そこでカフェ好きの女子たちが集まって、福島の素敵なカフェを巡ってガールズトークを楽しみながら、周辺のお店の情報を女子目線で発信するpeach heartカフェ部など、前向きに福島の魅力を伝えていける催しも開催するようになりました。

鎌田さん

■ peach heart カフェ部主催「カフェ会」の様子

peach heart カフェ部主催「カフェ会」の様子 写真1
peach heart カフェ部主催「カフェ会」の様子 写真2
peach heart カフェ部主催「カフェ会」の様子 写真3
鎌田さん

1年に何回かは、気軽に旅行に行く感覚で心も体もリフレッシュするRestrip(レストリップ:保養rest+旅行trip)という泊りがけのプログラムも実施しています。これまで山梨や広島、京都に行きましたが、旅先では体を休めるだけでなく、その土地の方々と交流したり、文化を体験したり、福島の現在を伝えたりといった活動も行っています。
今年の5月に実施した京都へのRestripでは、あらためて「自分たちにとっての福島」について話し合う場を設けました。これから福島でどうやって生きていくのか、福島のこれからをどうしていきたいのかという問題は、最近は福島でも語られなくなっています。そうした時期にあえて福島について話し合うことで、自分たちの考え方や生き方を見直すきっかけになればと思っています。
また8月には、ふくしまガールズフェス2014という、若い女性を中心としたイベントを開催します。このフェスでは、「おしゃれ」や「カワイイ」等を切り口に福島の「いま」と「これから」の暮らしについて語り合う機会を設けます。さらに、現在福島が置かれている状況とかつて同じような状況にあった熊本県水俣市の女性を招き、困難な状況の中で、そこに暮らす人々がどう向き合っていったのかについてなど語り合いたいと思っています。

鎌田さん
撮影:流響院

このフェスを共催する女子の暮らし研究所は、私たちを取り巻く環境を見直して、一人ひとりが「自分の暮らし」について考え、行動できる社会をつくるためにさまざまな提案をしていく団体です。私もこの団体に関わっているのですが、環境に負担をかける製品を一切使わないというのではなく、自分たちでできることから無理なく切り替えていければいいなと考えています。そのためにはパッケージの可愛らしさとか、使いやすさも重要ですよね。そうした女子目線の提案を大切にして、ものを選ぶ際の選択肢を増やしていければいいなと思っているんです。
私個人としては、福島県田村市の古民家再生プロジェクトの方々と共同で、古民家の再生に関わり始めました。古民家の取り組みを通じて、peach heart含めいろいろなグループが集える場にしていきたいと考えています。 東京で暮らしていた時は気が付きませんでしたが、福島は本当に豊かな土地なんです。原発事故が起きてしまったけれど、自然との共存を無理なく出来ているし、素晴らしいところだということを若い女性に伝えていきたい。これから子どもを産み育てる若い女性にも伝えるということは、未来の子どもたちにもつながっていくということ。震災や原発事故をきっかけとして、自分自身の暮らしを見つめ直して、少しでも変えていけるように実践していけるよう、いろいろなことに関わって、つながっていけたらいいなと思いますね。

撮影協力:TOSCA 〒606-8224 京都市左京区北白川追分町 67-7
TEL075-721-7779

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