情熱シアター

加納佑一さん

連携はあくまで"手段"
到達すべきは「被災者を支えられる社会」

連携はあくまで

東京ボランティア・市民活動センター
加納 佑一 (かのう・ゆういち)

学生当時から災害ボランティアとして三宅島帰島支援(2004年)などの支援に携わる。2009年東京都社会福祉協議会入職後は、東日本大震災、大島土砂災害などの支援に関わる。2021年には、平時から様々な団体が連携・協働した取組みを実施できるよう「市民協働 東京憲章」の策定に注力してきた。


このページでは、「困っている誰かのために、何かしたい」という志をともにする方々の、活動に対する熱い思いをご紹介します。

今回お話を伺ったのは、東京都社会福祉協議会が運営する東京ボランティア・市民活動センターの加納佑一さん。社会福祉を勉強していた大学時から「平時から災害に備えることの重要性」を追求していた加納さんは、つねにその意識を忘れることなく被災者支援・防災減災活動に取り組んでいらっしゃいます。

加納 佑一さん
第1章

災害時に各団体の力を最大限に発揮できるように。平時だからできること

──大学では社会福祉を専攻されていたとのことですが、現在のようなボランティア活動に関わる仕事に就くきっかけになったことは何だったのでしょうか?

加納佑一さん(以下、加納):
高校のときに初めて知的障害を持つ方の余暇支援を行なうボランティア活動に参加して、「こんな世界があるのか」と驚いたんです。当時から僕は知らないことへの興味が強かったので、「もっとボランティアの世界を知ってみたい」と思い、大学でボランティア活動に関わるようになりました。東日本大震災以降、日本全国で災害が頻発しているような印象ですが、じつはそれ以前も結構あって。それらのボランティア活動に参加していくうちに、災害ボランティアで活動していた方たちとの繋がりがどんどんできていき、いつのまにか仕事になっていました(笑)。

──「災害ボランティアの仕事をしたい」という思いから始まったわけではなかったのですね。

加納:
社会福祉について勉強していた当時から、僕のなかで災害というのはひとつの領域であって、メインではなかったんです。「平時にどれだけ地域や社会との関係性が作れるか」が災害時にも大きく影響してくるだろうと思っていたので、そういったことを勉強したり、仕事にしたかった。社会福祉協議会に入った理由も「地域の人同士の関係性を良くしていくようなことがやりたい」と思ったからでした。

『水害の視点でまちを歩いてみよう』というテーマで、地域の方々と街歩きをする加納さん。有事への備えの大切さを実際に体験してもらう。
『水害の視点でまちを歩いてみよう』というテーマで、地域の方々と街歩きをする加納さん。有事への備えの大切さを実際に体験してもらう。

──2013年から東京ボランティア・市民活動センターで働きはじめた加納さんですが、働いてみて知ったこと、実感したことなどはありますか?

加納:
都内のいろんな団体の方々と繋がりが持てているのが、このセンターの良いところだなと感じました。真如苑さんとの繋がりもそうですが、行政やNPO、生協といった多様な方たちと、「福祉」という分野を越えて「どうしたら良い社会にできるか」と考えることができるのはとても大事だと思っています。

災害時における社会福祉協議会の役割について話す加納さん。被災者の困りごとは多様であること、困りごとは時間が経つと変化すること、などが話された。
災害時における社会福祉協議会の役割について話す加納さん。被災者の困りごとは多様であること、困りごとは時間が経つと変化すること、などが話された。

──平時に取り組んでいるのは、具体的にどんなことでしょうか?

加納:
どういった取り組みを進めていくのか、各団体の方たちと集まって会議をしたり、防災まちあるきやワークショップを準備・開催しています。そこで大事になるのが「それぞれの団体が当事者意識をもって、みんなでやっていくこと」だと考えています。例えば真如苑さんだったら、信徒さんがたくさんいらっしゃって、立川に広い敷地がある。それらを活かしてできることってきっとあると思うんです。

当センターだけでなく、NPO・NGO、協同組合、企業など、それぞれができることは違いますから、各団体の良いところをプログラムに活かしていけるように考えるのが一番大事だと思っています。災害が起こったら圧倒的に被災者の数が多くなるので、普段からそれぞれの得意分野を熟知しておくことで無駄なく力を結集できる。そのための土台作りを常日頃から心がけています。

第2章

支援者と被災者、それぞれのネットワークが機能的に連携した成功事例とは

──加納さんのお話から、平時からみんなで連携して準備することの大切さがわかりました。実際に災害が起こったときに、とくに連携がうまくいったと感じた事例はありますか?

加納:
僕が直接携わったわけではなく、また、うまくいったというより参考にしたい過去の事例として挙げるとすれば、2000年の三宅島噴火のときの取組みです。そもそも発想が違うといいますか......。島民の方たちが立ち上げた「島民連絡会」を、当センターや協同組合、NPO・NGOなどが集まって作った「三宅島災害・東京ボランティア支援センター」が支えることができました。もちろん、島の災害という地域性もあったと思いますが、被災者のネットワークを支援団体のネットワークで支えていたことは興味深い点と思います。

いまの東京での取組みでは、行政と民間団体、また民間団体同士がどう連携するかという話がメインになるのですが、三宅島の災害では当事者である被災者のネットワークをどう連携して支援するかがメインだった。そこがまず根本的に違うんです。そう考えると、より市民に近い組織や団体とどう連携していけるかが、これからの課題のように感じます。

三宅島噴火(2000年)では、約4,000人の島民が島外生活を余儀なくされた
三宅島噴火(2000年)では、約4,000人の島民が島外生活を余儀なくされた
SeRVでも、東京災害ボランティアネットワークをはじめ各団体との連携をとりながら炊き出しボランティアなどを行った。
SeRVでも、東京災害ボランティアネットワークをはじめ各団体との連携をとりながら炊き出しボランティアなどを行った。

──なぜそのようなことができたのでしょうか?

加納:
いまの社会では個人情報の観点から難しいと思いますが、島民連絡会が作った電話帳をもとに、島民の方がボランティアで「ふれあいコール」というものを行なったり、全島民の多くが率先して参加する「島民ふれあい集会」を開催したりしていました。島民同士のつながりが強いという側面も大きかったと思います。

──時代という強みもあっての実現だったのですね。近年での成功事例も教えていただけますか?

加納:
2016年の熊本地震でのKVOAD(当時は「NPOくまもと」)の活動が挙げられると思います。「熊本地震・支援団体"火の国会議"」で細かいところまで課題や役割をすり合わせながら、連携して被災者支援ができたというのが大きいです。また、行政の方がNPOに今後の被災者支援施策について相談したり、互いに意見交換できる場も作られていました。それって、ほかではあまり見られないことだと思います。

NPO/NGO、内閣府、熊本県が集った「熊本地震・支援団体
NPO/NGO、内閣府、熊本県が集った「熊本地震・支援団体"火の国会議"」の様子

──三宅島では被災者の強固なネットワークを支援団体のネットワークで支えて、熊本では支援団体のネットワークを行政と繋げることで強固にして被災者支援にあたったということですね。

加納:
そうですね。それぞれに見習うところは多いのですが、一番重要なのはやはり「災害が起こる前から準備する必要がある」ということだと思います。

第3章

東京都で支援を行なう団体の共通認識として作られた「市民協働・東京憲章」

──平時からの準備として、現在取り組んでいることを教えてください。

加納:
各団体とのネットワークを広げて、みんなで力を合わせて災害に備えていくことが現在取り組むべきことなのですが、そうは言っても子ども支援、外国人支援、高齢者支援、障がい者支援といったように、それぞれの団体で専門は異なります。でも、いざ避難所で「うちの団体は子ども支援しかやらないので、高齢者のことは知りません」というわけにはいかないですよね。そこで、被災者の方たちを支援する際のスタンスみたいなものを共通で持っておくことは大事だろうなと思い作ったのが、「災害時のための市民協働・東京憲章」です。

首都直下地震など大規模災害の被害を少なくするために、ボランティア・市民活動団体は何を目指すべきなのか、という問いから策定された。都内の78団体が賛同(2022年6月現在)
首都直下地震など大規模災害の被害を少なくするために、ボランティア・市民活動団体は何を目指すべきなのか、という問いから策定された。都内の78団体が賛同(2022年6月現在)

──真如苑も昨年(2021年)賛同していますが、改めてその内容についてご紹介いただけますか?

加納:
災害時だけでなく、平時から防災・減災に取り組む姿勢を記しています。特に、大切にしたい視点として「多様性」と「平時からの取組み」を挙げています。今後はそれぞれの団体に広めていきながら、いろんな意見をいただきたいと思っています。そのほかに現在取り組んでいることとしては、民間団体のネットワークを広げていくことを目的とした新しい団体を2022年10月に立ち上げようと準備しています。

コロナ禍においても、各団体との意見交換が定期的な行われてきた。平時からの取り組みが欠かせないという意識が、改めて共有される場でもある。
コロナ禍においても、各団体との意見交換が定期的な行われてきた。平時からの取り組みが欠かせないという意識が、改めて共有される場でもある。

──東京ボランティア・市民活動センターでもネットワーク作りに力を入れていると思うのですが、新しい団体はどこにフォーカスしているのでしょうか?

加納:
行政と社協とNPO等の民間団体が一堂に会し、それぞれの団体性を活かした活動・連携をより迅速に行なえる仕組み作りを目指しています。連携は大事なのですが、あくまでも"手段"なんですよね。最終的に到達しなければならないのは「被災者の方たちを支えられる社会」なので、それを忘れないように一つひとつ取り組んでいきたいと思っています。


「・・腹がへっては活動できぬ。」というコピーとともに
「・・腹がへっては活動できぬ。」というコピーとともに

「いつ被災者になるかわからない私たちが、備えとしていまやっておくべきことは何でしょう?」と伺うと、「地域に知り合いを作るのが難しかったら、同じ趣味とかでもいいと思うんです。とにかく社会と繋がる"何か"を増やしていただきたいです」と答えた加納さん。つねに被災者視点で物事を考え、取り組んでくださっているのだなと感じたエピソードでした。

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