特集 「のとやさしまつり」に見る、災害からの包括連携協定のあり方<後編>

「のとやさしまつり」に見る、
災害からの包括連携協定のあり方

穴水町社会福祉協議会の橋本みすずさんと、認定NPO法人レスキューストックヤードの浦野愛さん。2007年の能登半島地震をきっかけに始まったおふたりの関係は、より多くの団体とのつながりを広げながら、新たな形へと育っていきました。

対談のなかで行政・社協・NPO団体の関係について「点から線になって、面になってきた」と話してくださった橋本さん。その「面」がひとつの形として現れたのが、5月17日に穴水町で開催された「のとやさしまつり」でした。

橋本みすず(右)、浦野愛(左)

橋本みすず(右)

石川県穴水町社会福祉協議会
地域福祉と災害支援に携わる。2024年の能登半島地震後は、災害ボランティア・ささえあいセンターの運営や被災者支援の調整役として活動。住民に寄り添いながら、福祉・介護・生活再建をつなぐ地域支援に尽力する。

浦野愛(左)

認定NPO法人レスキューストックヤード常務理事・社会福祉士
静岡県出身。阪神・淡路大震災をきっかけに被災者支援に携わり、2002年のレスキューストックヤード設立時から活動。避難所運営や災害時要配慮者支援、地域防災・災害ボランティアの育成など、平時からの地域づくりと災害に強い社会の実現に取り組む。

1. 一団体だけだったつながりが、面へと広がった

──2025年12月に穴水町・穴水町社会福祉協議会・SeRVを含めた13のNPO団体による包括連携協定が実現しました。13ものNPO団体をまとめることができたのはなぜでしょうか?

浦野愛

浦野愛さん(以下、浦野):東日本大震災以降、さまざまな技術を持ったNPOの方々が増え、NPO間のつながりや社会福祉協議会との連携が以前よりも重視されてきたことが追い風になっていました。「穴水町に拠点を張って、継続的に支援をしていきたい」という団体や、「南海トラフに備えて、防災や災害支援について学ばせてもらいたい」という団体も手を挙げてくださり、レスキューストックヤードも含めて「長期的な視点で穴水町と関わっていきたい」と意思表示をした団体が13あったということです。

──元々レスキューストックヤードは穴水町社会福祉協議会とつながりがあったと伺っています。

浦野:そうなんです。2007年の能登半島地震で被災地を回っていくなかで、たまたま穴水町に立ち寄る機会がありまして。甚大な被害のわりに、外からのボランティアさんの数はかなり少なかったんです。そのときに橋本さんから「もしお手伝いしてくださるなら、来ていただきたい」とお声がけいただいたのが始まりでした。

橋本みすず

橋本みすずさん(以下、橋本):当時からほかの団体さんとも関わりはありましたが、何日間か来てくださって活動が終了するパターンが多かったんです。点としての関わりであって、線にはなっていなかった。そんななか、レスキューストックヤードさんは「継続して活動します」と言ってくださったので、2024年の能登半島地震の際にもすぐに連携できましたし、ボランティアさんたちの中心となってまとめていただくことができました。

──そのつながりが、包括連携協定を結ぶことでさらに強くなったのですね。

橋本:そうですね。包括連携協定によって、行政と社協、NPO団体が点から線へ、線から面になってつながってきた実感があります。情報共有が全体でできるようになりましたし、調整もスムーズになっています。社会福祉協議会とレスキューストックヤードさんだけではできなかったことが、みんながつながることによって、それぞれの得意分野を生かしてできるようになる。そういった意味でも、包括連携協定はとても重要でした。

2. 社協がハブになる、行政が環境をつくる

──穴水町が包括連携協定の締結まで到達できた理由は何だとお考えですか?

橋本:まずは、NPO団体への呼びかけや取りまとめをレスキューストックヤードさんにお任せできたのが大きかったと思います。さまざまなNPO団体が全国で活動されていますが、私たち社協は穴水町に来ていただいた方たちしか把握できていなかったので。レスキューストックヤードさんが軸になってくださったからこそ、これだけの規模でまとまることができたのだと思います。

それに加えて、役場や社協のスタンスですよね。NPO団体のみなさんは非常に熱い思いを持っていらっしゃるので、その熱さをきちんと受け止められる役場と社協でないと、なかなか包括連携協定にまでは行き着かないと思います。

浦野:穴水町では社協さんが中間支援組織のハブになってくださっていて、そのハブの動きを行政がしっかりと理解し、情報を提供してくださったり、動きやすい環境づくりをサポートしてくださいます。困ったことがあっても、役場に相談したら必ず検討してくださいますし......そうやって地元が間口を広げてくださることが大切だと思います。そうでなければ、私たちは動くことができないですから。

地元社協とNPO団体との熱い結びつき 地元社協とNPO団体との熱い結びつき
ハブとなる地元社協とNPO団体との熱い結びつきが包括連携協定への道を開いた

3. 「困ったときのSeRV」連携におけるSeRVの役割

──包括連携協定にSeRVも参加しています。穴水町とSeRVは元々どのような関わりがあったのでしょうか?

橋本:SeRVさんは2024年の能登半島地震が発災した当初から来てくださって、人手のないときに炊き出しをしたり、サロンを回っていただいたりしていたんですね。それで、ボランティアセンターが少し広くなった2月の終わりから常駐いただき、ニーズの聞き取りや現地調査の取りまとめをお願いしました。当初は3か月の予定でしたが、無理を言って半年くらい支援していただいて。そうやって常駐で入ってくださることって本当にありがたいことなんです。大きな助けとなりました。

浦野:レスキューストックヤードは「震災がつなぐ全国ネットワーク」という組織の事務局もやっていて、真如苑さんにはその事業で助成金をいただいたご縁がありました。それで、2024年の能登半島地震発災時に「寝具や炊き出しの食材が底を尽きそうです」と相談したら、すぐに集めてくださり、継続的に送ってくださいました。その後も「ほかにできることはありませんか?」とお声がけいただき、ボランティアセンターの常駐と足湯ボランティアをお願いすることになったという経緯ですね。

穴水町災害ボランティアセンターでの一場面
穴水町災害ボランティアセンターでの一場面

私としては「困ったときのSeRVさん」で(笑)。「大丈夫ですか? 何かできることはないですか?」とまめに連絡をくださって、どんな話でもまずは聞いてくださるんです。相談したことへのレスポンスも速く、「ここまではできるけど、ここからは難しいです」とはっきりお話ししてくださる。なにより、あの悪路の中で駆けつけてくださったことで、信頼感がより高まりましたね。本当に助かりました。

──先日の「のとやさしまつり」でも足湯のブースが盛況でしたね。

浦野:温かいお湯に足をつけてリラックスできるというのもありますが、SeRVさんの「話を聞く姿勢」が安心感につながるのだと思います。SeRVさんの足湯を地域の方たちはとても心待ちにしていて、新規の方がいまだに増えているんですね。根底にあるのは、「ここに来れば自分の話を聞いてもらえる、受け入れてもらえる」という安心感だと思います。

「のとやさしまつり」での足湯コーナー 「のとやさしまつり」での足湯コーナー
「のとやさしまつり」での足湯コーナー

4. 関わり続けることが、人をつなぎ続ける

──穴水町と外部の支援団体がよい関係性でつながり続けている理由は何だとお考えですか?

橋本:みなさんとても優しい方たちばかりなので、一度関わってくださったら、その後も心配でいられないのでしょうね。「今度何人連れていくから、話を聞かせて」とか「その後どうなってる?」とかって連絡をくださったり、頻繁に顔を出してくださるんですよね。

「のとやさしまつり」でも、久々に東京から来てくださる方もいて、地元住民の方が、「東京から今日来てくれるって聞いたから野菜を持ってきた」と、採れたての野菜を東京の支援者の方に渡す姿を目の当たりにしました。単なる顔見知りの関係からもう一歩進んだ深い関係、信頼関係が築かれているのだと思います。そういったつながりが大事ですよね。

浦野:社協さんが窓口になって「いつでも来てね」と常に言い続けてくださっているので、また来たくなるんじゃないかなと思います。2年、3年、さらに長期の復興期でも、外からの関わりが大事だという認識を持っている団体が多いですし、それは地元が間口を広げてくださっているからこそです。

──今後の展望についてはどのようにお考えですか?

橋本:穴水町の人口を増やすには限界があるので、関係人口を増やす方向で考えています。13団体のみなさんには、災害とは全く関係のないイベントでも穴水町に来ていただけるようお声がけして、なんとか通っていただける人口を増やしたいですね。

浦野:私たちはボランティア便を名古屋から出し続けているのですが、穴水町に来て住民の方たちと触れて、「自分がここで役に立てることがあるんだ」という気づきを得ていただけると、リピーターがどんどん増えていくんです。次の災害のことを考えたときに、そういった視点で動ける人が増えていれば、命や健康、活力といったものが守られやすくなると思うんですよね。

並行して、災害支援活動や包括連携協定、「のとやさしまつり」など、私たちが行っていることを住民の方々と共有していくとともに、住民のみなさんがそれぞれ工夫してこられたことを私たちが学ばせていただく。次の災害に備えた学び合い、人づくりというところでお役に立てればと思っています。

橋本みすず(右)、浦野愛(左) のとやさしまつり
"全てのやさしさを大切に"という思いが込められた「のとやさしまつり」

黒田さん、橋本さん、浦野さんのお話を伺い、発災から2年という時間をかけて育まれた信頼が包括連携協定という実を結んだことを教えていただいた今回の特集。2026年5月に穴水町で開催された「のとやさしまつり」は、行政・社協・NPOそれぞれが築いてきた「人のつながり」が集まる、あたたかいイベントでした。

のとやさしまつり集合写真

復興はまだ続きますが、顔を見て笑い合える場所があること、「また来るよ」と言える関係があること、そのひとつひとつが、これからの穴水町を支える力になっていくのだと感じました。

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