特集 "災害の爪痕"から目をそらさずに

"災害の爪痕"から目をそらさずに

今回は2013年10月15日に発生した台風26号による
被害が大きかった伊豆大島を訪ね、被災地の"今"をお届けします。

伊豆大島における台風26号による災害について

2013年10月15日(火)から16日(水)にかけ、日本に上陸した台風26号による記録的な豪雨により三原山の外輪山中腹が崩落。土砂は大きな土石流となり、元町神達地区や元町二丁目、三丁目などの集落を襲った。

土砂は住宅やホテルなどをのみこみ、全壊家屋133件(うち非住家62件)、半壊家屋50件(うち非住家25件)など、385件が損壊。36名が亡くなり、未だ3名が行方不明(2014年2月現在)という甚大な被害が発生した。
伊豆大島台風26号被災状況マップ
伊豆大島台風26号被災状況マップ
被災地の様子1
被災地の様子2
2013年11月末
被災地の様子
被災地の様子3
2014年1月末の被災地の様子
2014年1月末の被災地の様子

椿、海、山、温泉、そして島民の温かなもてなし......
東京から飛行機で25分と、都心からも気軽に遊びに行けるリゾートとして親しまれてきた伊豆大島。
2013年10月に日本列島を通過した台風26号が招いた土砂災害は、島の持つ美しい景観を大きく変え、大きな悲しみをもたらしました。

-あれから約3ヶ月が経った2014年1月25日、伊豆大島を訪れました。
ちょうど、翌日に椿まつりの開催を控え、ニュースで「復興が進む伊豆大島」の姿が伝えられていた日でした。

ところが、空港から大島社会福祉協議会に行く道すがら目に飛び込んできたのは、泥だらけで窓も割れたガソリンスタンドや、屋根や壁が壊れた家々。島のほとんどの地域は、普段と変わらない平穏な町並みが広がっていますが、土砂の通り道だけがきっちりと線を引いたように崩壊した住宅が残り、川の堤防も大きく決壊したまま。3ヶ月前と変わらない、テレビで報じられていた明るい雰囲気とはかけはなれた光景にしばし言葉を失ってしまいました。

訪れた大島社会福祉協議会事務局の事務局長で、災害ボランティアセンター長も務めている藤田好造さんは、現在の復興状況についてこのように語ります。

大島社会福祉協議会事務局長 藤田好造さん
大島社会福祉協議会事務局長 藤田好造さん

「ご覧になったとおり、正直言ってまだ復興への目途はほとんどたっていないのが現状です。全壊、半壊した店舗や民宿はまだ1件も再開できていませんし、行方不明者もおりますので、全員の状況がわかるまでは...と、町としては百か日の法要も控えました。
現在も、土砂・ガレキの撤去など、主に島内のボランティアにご協力いただきながら、復旧・復興に向け活動を進めています。」

それでも、と藤田さんは続けます。運動場に流木やがれきの山ができていた町立つばき小学校では、年明けから運動場の使用を再開しました。また、1月24日には全46棟の仮設住宅も完成。新たな生活に向けて避難住宅等からの引っ越しが進んでいます。

完成した仮設住宅
完成した仮設住宅
かわら版
かわら版

ボランティアセンターでは、12月から、毎週月曜、火曜日に、元町地区を中心に「かわら版」を戸別に配布。毎週木曜日には『あいべえ』という住民交流会を開き、お茶を飲みながらお話ししたり、マッサージや足湯をしたりと、被害に遭った方々が孤立しないための取り組みを引き続き行っているとのことでした。

椿の花

復興の旗印として、椿まつりの盛り上げに取り組む伊豆大島。しかし被災された方々の日常に目を転じると、昨年の台風がもたらした被害の爪痕を埋めるにはまだ、多くの時間と支援の手が必要とされていることを実感し、伊豆大島を後にしました。

東京に向かう飛行機の窓に映る島の姿を眺め、寒さに負けずに大輪の華を咲かせる椿と、依然困難な状況に身を置かれながらも凛然と前を向こうとされている人々の姿を重ねながら、私たちにできる支援の形に思いを巡らしました。

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